Beast Love
ーー……一方その頃、中央市民病院では。


「お兄ちゃん、もうすぐ文化祭だね! さくら、楽しみにしてるからねっ」


病室内ではパジャマ姿の妹を前にして、その可愛らしさに悶絶している白虎町 陽がいた。


「んーー? 桜はホンマ可愛いなぁ。桜が文化祭来る言うから、兄ちゃん張り切って準備しよるんやでぇ〜んぐふふっ、ぐふっ」

ベッドに両肘をついてニヤニヤと笑みを浮かべる様は、兄妹というよりロリコン気味の変質者のようである。


「それにしても、よかったね。お兄ちゃんの友達の、マサトさんがクラスをまとめてくれて」



そう、マサトが真面目に登校するまで、今のクラスは荒れ放題だった。


他クラスから与えられるイジメも横行し、クラス内で力ある者は力の無い者を雑に扱い、弱者は屈服するしかなかった。


それが、数々の悪い伝説を打ち立てている鳳凰 正人が通学するようになった途端に暴威を振るっていた皆が彼を恐れ、ピタリと悪行が止んだのである。



「ん? あ、ああ。せやな。アイツが文化祭に参加するんやったら、みーんな否応がなしに参加せなアカンようなるからな〜。ホンマ、おってくれるだけでクラスが団結しよるから、大助かりやで」


「ふふっ、マサトさんはスゴイんだね」


妹の可愛らしさにとろけてしまいそうな白虎町 陽だったが、鳳凰 正人の名を口にした瞬間、胸にざわめきのようなものを覚える。



(……なんなんや? この、不安な気持ちは……)






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