Beast Love
「ゴホン。あのー、宇佐美先生。体育祭の予定は決まりましたか?」
ハゲ散らかした教頭に急かされ、受話器を置いた宇佐美は慌てて丸椅子を回転させて、机に置いていたメモ用紙を教頭に差し出した。
「もちろんですよ、教頭先生〜」
「なら、良かった。提出していないのは3年Z組だけでしたからね。これでようやく、体育祭の話が進められますよ」
「あははー、すみません」
作り笑いで誤魔化すも、教頭からは厳しい一言で釘を刺される。
「体育祭でも”不要なトラブル”は起こらないように、よろしく頼みますよ?」
「もちろんです」
バーコードの頭を夕日に光らせながら、教頭は自分の席へと戻っていった。
宇佐美は笹原が届けに来た日誌で口元を隠しながら、ワザと隣の体育教師に聞こえるように愚痴り始める。
「……うるせぇ、ハゲ。ウチのクラスは文化祭を盛り上げあげたでしょ。いやらしい目と頭ばっかり光らせてないで、ちゃーんと生徒を褒めてあげろっつーの」
「ぶはっ、」
思わず体育教師が吹き出してしまい、なにかを察した教頭はその場から立ち上がる。
「宇佐美先生、なにか言いましたかね?!」
「いえ、なにもありませーんっ」
こうなると最早、狐と狸の睨み合いである。
ムムムッ、と口をへの字に曲げた教頭が今日はひとまず折れ、教師たちから集めた体育祭のメモ用紙をまとめ始める。
Z組は、笹原がほんのちょっとの悪戯心で書き換えた用紙のまま……。
これがのちに、波乱の体育祭の幕開けとなることは誰も知る由もない……。