弟はドラゴンで
でも、何を……?
……わからん。
まぁ、いいか。
お腹すいた。
お菓子でも食べよ。
龍も食べるかな。
難しいことは考えるのをやめ、リビングの棚にある、箱に入ったチョコクッキーを持って、自分の部屋に向かった。
とりあえず着替えて、楽な格好の部屋着になってから、龍の部屋に行く。
コンコーン!
ノックして、「入っていーいー?」と龍に問いかける。
「いーよー」と返ってきたので、龍の部屋のドアを開けた。
「どしたの?」
「チョコクッキー!食べる?」
「たべる!」
龍が、さっきの少し怖い顔からいつもの無邪気な顔に戻った。
……よかった。
なんか、いつもの龍じゃなかったら、ちょっと心配だもん。
でも、ひとつだけ変わらないこと。
やっぱり、翼とツノを出さない。
昨日までは、普通だったのに。
今日はなぜか、ずっと人間の姿のまま。
「うまいなこれ!」って言って、クッキーを食べる龍の姿を微笑ましく見ていると、首の横あたりに、かすり傷みたいなものがあるのを見つけた。
……傷?
「龍、どうしたの?首の傷……」
私がそう尋ねると、龍は慌てるようにパッと手で首にある傷を覆い隠した。
「なんでもねぇよ、ちょっと転んじまったんだ」
龍はそう言って、サクサクと音を立てながらクッキーを食べる。
……おかしい。
龍は身体能力が異常にいいはず。
転びそうになったら、バク転やら何やらでもして、転ぶのを上手く回避すると思うんだけど。
「体調でも悪いの?」
「え?いや、全然?」
「そう……」
体調でも悪くて、転ぶのを回避できなかったのかなって思ったけど……そうでもないみたいだし。
なんか、モヤモヤする。