恋は、秘密主義につき。
本当なら。プレゼントを買った夜に取り付けるつもりでいた約束。それを電話の時間がもう遅かったとか、自分で理由をこじつけて今日まで先延ばしにしていました。
一週間前というタイムリミットに背中を押されて、誘う決心だけはついたけれど。今の気持ちをどう話せばいいのか。迷路を行ったり来たり、出口を探す迷子のまま。

いつもだったら、愁兄さまに遠慮なく泣きついてしまうのに。
・・・兄さまにはどんな悩みでも打ち明けられるはずなのに。何かが躊躇わせる。佐瀬さんのことは、言ってはいけない秘密だと。


『それよりレイちゃんから欲しいものが、あるんだけど』

急に悪戯っぽい響きが耳に届いた。

「お誕生日に、ですか?」
 
『ん、そう。・・・当ててみる?』

いったい何でしょう。
征士君は子供じみて何かを強請ったり、無理難題を押し通す人じゃないと思っていますし。
頭を捻ってみたけれど上手く思い付きません。

「・・・えぇと、すみません。降参です」

申し訳なく白旗を上げると、耳元にクスリと聴こえた。

『意地悪したかったわけじゃないんだ。ごめん』

それから一つ間を置き。不意に真面目な声で言う。

『レイちゃんの時間を全部、俺にくれないかな。その日だけは』
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