恋は、秘密主義につき。
やんわりと添えるくらいの加減で応えた私とは対照的に、吸いつくように密着した彼の体温。
あまり意識をしないように視線をさり気なく、流れ去る景色に逃して。

卑怯な言い方をするのなら。
今日は。子供の頃に結婚の約束事をした、“幼馴染”のお誕生日を一緒に過ごす。
傲慢な言い方をするのなら、・・・せめてもの償いに。

きっと。一日の終わりに、征士君は私に憎しみの目を向けるでしょう。人の気持ちを弄ぶなと。何を言われても、すべて受け止めて。・・・そして。
見下げ果てた私を、思い出と一緒に消し去ってしまって欲しい。

想いを知っていて、傷付けることしか出来ない私を赦さなくていいです。
佐瀬さんを好きになったことを、何ひとつ悔やんではいないから。

良心の呵責だとか、申し訳ない気持ちなんかじゃなく。
今日の私は征士君の為にだけ。嘘のない笑顔でいようと決めたんです。
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