恋は、秘密主義につき。
楠田家は、政界と財界に連なるわりと華麗なる一族で。とは言っても私は特段、お嬢さまというわけでもない。家だって、4LDKの庭付き、駐車場3台分付きのただの注文住宅だし、お手伝いさんだっていない。
パパとママと家族三人で暮らす、ごく普通の一般人。・・・と自分では思っているのだけど。

強いて言えば、御年88歳のひいお祖父さまは、議員を引退しても未だに政治の世界ではドンみたいに言われてるとか、現役のお祖父さまも大臣経験者で時々テレビに映るとか、パパの兄弟がそこそこ大企業のトップだとか、そのくらい?

でも変わり種のパパは、誰もが知ってる大手メーカーの洗濯洗剤の開発研究にいそしんじゃってるから、ママはいつも肩身が狭いって嘆いてばかり。
短大卒の私を、叔父様の楠田レーベンパートナーにコネ入社させて、訊かれた相手に『そんな一流企業に?!』って言われるのが唯一の掬いだとか、何か。

そんなわけで従兄弟達は、御曹司とかそういう括りで間違いなくて、私の家は一族の外れ者? ・・・かって言うと、これもまたそうでもなかったり。
楠田は男子家系なのか、女の子の出生率がかなり低いらしく。特にお祖父さまは、私が可愛くて可愛くて仕方がない。
お宮参りから始まって、七五三、成人式の晴れ着もあつらえてもらったし、誕生日、クリスマスのプレゼントはブランド物の時計やバッグ。社会人なのにお年玉も継続中だ。(ご祝儀袋に、臨時ボーナス?ってくらいの金額で)

何より。『レイちゃんの王子様は、ジジが見つけてやるからなぁ』が口癖のお祖父さま。
確か、『大きくなったら、レイちゃんの花婿さんになる征士君だよ~』的な引き合わせ方をされた記憶は、朧げながらにある。
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