恋は、秘密主義につき。
でもだからって! 今頃そんなもの掘り起こされても困りますー。
だいたい最後に会ったのだって、中等部に上がる前くらいの話じゃないですかぁっ。10年も経ってて、とっくに忘れてましたよ!

ドアの向こう側でまだ諦めないママが、更に甲高い声を張る。

「今は、お付き合いしてる人だっていないでしょっ? これも社会勉強と思えばいいんです! それに、お義父さまが一番悲しみますよ? 美玲を大切に想って、誰より可愛がってくれてるのに、その気持ちを無下にするような冷たい子に育てた覚えはありませんよ・・・」

最後は泣き落とされた。

お祖父さまの気持ちって言われちゃったら、返す言葉がない。
私はこれで何度目かも分からない盛大な溜め息を漏らし、白旗を上げる。

「分かりました。行きますけど、結婚はOKしたわけじゃないですよ? 会って、どうしても無理だったら、私が直接お祖父さまに断ります。それでいいでしょう?」

「もちろんですよ! ほらほら、1時には迎えに来ちゃうから早く支度しなくちゃ駄目よっ?」

一転、ウキウキ声のママ。
私の心の中は、氷点下の猛吹雪・・・・・・。
憂鬱な気分でノロノロと立ち上がり、シャワーを浴びる為に、籠城していた自分の部屋から重い足取りで、バスルームへと向かったのだった。



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