恋は、秘密主義につき。
「軽い脱水症状だろ。・・・ツライなら寝てな」

素っ気ない口調だったのに、どこか柔らかさを纏っていて。
目を見交わした時、思いきり心臓が跳ね上がった。

きっと、貴方はどこかに仕舞いこんだままだったんでしょう。
愛おしむような。少し甘さの熔けた眼差しも、・・・笑い方も。


佐瀬さんは何も変わっていないなんて。
受け取った代わりに、ちゃんと私に差し出してくれている。
手を。貴方から。

胸の奥がきゅうと鳴いて、泣きたいくらい切なくなった。
好き。大好き。・・・そんな言葉じゃぜんぜん足りない。

「・・・・・・愛してます」

熱いものが込み上げ今にも涙が零れそうなのを隠すように、見た目以上に逞しい佐瀬さんの裸の胸に顔を押し当てる。

他にどう言っていいのか分かりませんでした。
恋も知らなかった私が、口にしていい言葉じゃなかったのかもしれません。

「・・・オマエね」

溜め息雑じりの響きに、生意気を言って呆れられたのかと半泣きの顔を上げれば。
参った、とでも言いたげな、苦虫を噛み潰したような表情で私を見下ろす貴方。

「なんだってそう、オレを煽るかねぇ・・・」
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