恋は、秘密主義につき。
一実ちゃんまで巻き込んでしまうのは、すごく心苦しいです。けれど。
守るために。
この恋と。
佐瀬さんを。

「兄さまも、今はきっと許してくれないと思うので・・・」

歪みそうになった顔を俯かせると、カウンターの内側できゅっと強く、手を握り締められました。

「美玲がそうして欲しいって言うなら、あたしは何でもしてあげる。・・・でも、佐瀬サンはどうなのかしらね。美玲に嘘つかせてまで、隠しておきたいって本気で思ってるの?」

「・・・え?」

「美玲を、楠田一族のお嬢さまだって承知のうえで受け止めたんだったら、佐瀬サンも覚悟を決めたってコトじゃないの? そうじゃないなら、あたしも許さない。美玲は絶対に渡さないわ」

「一実ちゃん・・・・・・」

潜めた声できっぱり言い切られ、おずおずと横を見上げた。 

スタイルも良くて、アテンダントの制服が誰より似合って。誰をも惹きつける笑顔が素敵な私の大親友で、お姉さん。ときどきお兄さん。
手を握ったまま、真っ直ぐ前に視線を向ける凛とした横顔は、愛くるしいのに男らしく見えて少しドキっとしました。

「周りに反対されそうで、美玲が悩んでるのも分かってるつもり。でも二人のコトなんだから、佐瀬サンと二人で悩むべきなんじゃない? ちゃんと、あのひとの気持ちも確かめてみたら? それが出来ないなら愛でもなんでもないって思うよ、ボクは」

澱みのない色をした眼差しが向いて私を射抜き、にっこりと魅惑的な微笑みを浮かべたのでした。
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