恋は、秘密主義につき。
7-1
「それで佐瀬サンと初お泊りになった、ってワケね?」

「・・・はい」

「電話も来ないし心配したけど、よかったじゃない」

「ごめんなさい・・・! 成り行きでそうなって、頭が回らなかったです~」

姿勢を正して一実ちゃんと並んで座り、カウンターのこちら側から真っ直ぐエレベーターを注視しながら、ひそひそ声で話す私達。
接客や外出する社員を見送る合間に、彼(彼女)からの取り調べが再開します。

「美玲の両親は相手が許婚クンだって思ってるんだからこの際、旅行とか行っちゃえば?」

「そんなことしたら間違いなく、結婚相手は征士くんになっちゃいます~」

「厄介よねー、レンアイもケッコンも口出しされるのって。・・・そう言えばシスコンお兄さんは? 許婚クンの誕生日のコト、根掘り葉掘り訊かれたんじゃないの?」

一実ちゃんのもっともな質問に、思わず深い吐息が漏れます。

「兄さまには、まだこれからなんです・・・」

昨日は結局、佐瀬さんに送ってもらい家に着いたのは夕方近くでした。
パパ達も当然帰っているだろうと少し緊張気味だったのに、寄り道をしてきたらしく顔を合わせたのは8時過ぎで。
意味深な笑顔でしたけど何も言わなかったママ、いつも通りのんびりのパパと、リビングで当たり障りのない家族の団欒をしたあと。兄さまに電話を掛けようと思いつつ、自分の部屋に戻ってふらふらとベッドに寝転がったら、スマートフォンを手にしたまま朝まで目覚めませんでした。

「帰ってから電話で話すつもりで・・・、でもその前に一実ちゃんにお願いがあるんです」

うかがうように、そっと隣りを見上げると。
ふわり、と巻き髪が揺れて、一実ちゃんもこっちに横顔を傾けてくれた。

「土曜日の夜は征士君のことを相談しに、一実ちゃんのところに泊まったことにしてもらえませんか」

思い切って。

「・・・許婚を正式に解消するまでは、お祖父さま達に佐瀬さんのことは知られたくないんです」
< 224 / 367 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop