恋は、秘密主義につき。
7-4
古典風の照明が下がり、大正時代風のサロンを思わせるレトロな雰囲気の個室。
部屋ごとに趣向が違うのだと兄さまが微笑む。

それほど量は食べない私に合わせてオーダーしてくれた、小籠包や海老蒸し餃子、北京ダック、春巻き。大根餅にチャーシュー饅など、円卓の上に並んだ点心はどれも本当に美味しかった。
デザートのマンゴープリンも舌触りが滑らかなのにとても濃厚で。お祖父さまに連れて行ってもらったお店の中でも、比べて絶品でした。

芸能ニュースや人気の映画、あれこれと話題が途切れることもなく。大好きな兄さまの笑顔に引き込まれながら優しい時間を過ごして、いつもと変わらないくらいに楽しかった。

そっと口許を拭ったナプキンをテーブルの端に畳んで置くと。私はあらたまって、向かいの愁兄さまを見つめました。

「・・・兄さま。結婚のことでお話があるんです」

「聴くよ。言ってごらん」

淡い笑みを浮かべ、穏やかに答える兄さま。
膝の上で拳を握り締め、お腹に力を込める。
底から押し上げるように。一息に。思い切る。

「ごめんなさい、兄さま。私は征士君とは結婚できません。征士君にも、会ってそう伝えました」
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