恋は、秘密主義につき。
11-1
佐瀬さんと出会った日の、街路樹の影と暮れがかりの色が懐かしいとさえ思えてしまう。
もう、なのか。たったの、なのか。3ヶ月前までには思いもしなかったことが本当にたくさん。佐瀬さんを好きになったことも、未来ごと変わっていく自分にも。

季節はいつの間にか、早送りで灼熱の夏に様変わりしていて。
23歳を迎える8月2日はもう目の前に。

当日はいつも、パパも早く帰ってきて家族3人でホームパーティ。その前後の週末に毎年、愁兄さまがホテルの一室でお祝いしてくれるのです。
従兄弟達も参加自由で、ほぼ皆勤賞はたぁ君。今回は佐瀬さんと一実ちゃんも()んでくれるので、待ち遠しくて仕方がありません。

お祖父さまをはじめ、たぁ君のおばさまやふーちゃんママからも欠かさずにプレゼントが届きますし、真夏にもクリスマスがあるような贅沢な気持ちがしてしまいます。




でも私にはその前にすべきことがあって。
胸に鈍い痛みを憶えながら掌をきゅっと握りしめ、深く吐息を逃したのでした。





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