恋は、秘密主義につき。
『幼馴染み』と『プロポーズ』が二つ並びのままだということに更に惑い、思考回路が右往左往して。
よほど困り果てた顔でもしていたのか、「ごめん」と柔らかなトーンで続いた。

「振り向かせられなかったら会わないって言ったのは俺なのに、都合いいことばっかりだよな」

「兄さまは、なんて・・・?」

「兄として妹の友人が増えるのは嬉しいって、言ってもらったよ。プロポーズは保科さんが預かってくれた。必要なければ処分してかまわないって頼んだし、レイちゃんは気にしなくていいから」

プロポーズを処分。・・・って。
思わず目を丸くすれば、頭をぽんぽんと撫でられ、淡く澄んだ微笑みが浮かぶ。

「たぶん出向は9月いっぱいまでだけど、これまで通りランチを一緒にしたり、出向が終わっても、有沢さんも誘って3人でどこかに遊びに行けたらって思ってる。ラインも電話も、したい時には遠慮なくするよ。佐々木君に倣ってね」

「・・・私も、大切な幼馴染みに二度と会えなくなってしまったら寂しいです」

胸を詰まらせながら、やっとそう小さく笑い返すのが精一杯。
< 351 / 367 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop