恋は、秘密主義につき。
季節は春。それとも、もう初夏。・・・澄んだ青空、爽やかに渡る風。新緑の薫り。
いっそ季節外れの台風でも襲来しないかと密かに願った。のに。これ以上ないってくらいの好天。

汚れひとつない真っ白のB●Wを卒なく、我が家のカーポートに駐車し、花束持参で玄関先に立った青年。許婚の鳴宮征士(なるみや せいじ)君。
二つ年上で24歳。楠田レーベングループにお勤めで、お祖父さま同士が親交が深いんだとか。

Vネックのざっくりした春ニットに、細身のパンツスタイル。韓流スターにでもいそうな細面の甘い顔立ち。ダークブラウンの髪はワックスで遊ばせているけれど清潔感があって、いわゆるチャラくもない。
身長もあって、スタイルも良い。・・・・・・女の子に不自由してるタイプには死んでも見えませんけど。

「ご無沙汰しています。10年ぶりになるので、もうお忘れかと思いますが」

そう言って笑いかけた征士君に、ママは嬉しさを隠し切れない満面の笑顔。

「ずい分とイケメンになって、でも面影はあるかしらぁ。征士くんみたいな息子ができたら、本当に自慢だわ。今日は美玲をよろしくお願しますねぇっ」

「こちらこそ。レイちゃんに嫌われないよう、精一杯ホストを務めさせてもらいます」

当人をよそに、会話が盛り上がってます。
レイちゃんて呼ぶんだなぁって、他人事みたいにぼんやり二人を眺める。
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