恋は、秘密主義につき。
「レイちゃん、ちょっとこれ持ってて」

そう言って、肩掛けしていたトートバックから折り畳まれたシートを取り出し、征士君がバッグの方を手渡してきた。
周囲と適度な距離をおいた辺りで、大きめのシートを広げた彼は「靴脱いで、座って」と、思ったより重みがあるそれをまた私の手から引き取り、にっこり微笑む。

「お弁当、作って来たから一緒に食べよう」

思わず。目をぱちくり。
・・・えぇと。そういうのは普通、女子が男子に言うセリフでは??
呆気に取られている私に、征士君は事も無げに悪戯っぽく。

「大学の時から一人暮らしで自炊してるし、これぐらいは俺も出来るっていうのをね」

借りてきたネコのようにちょこんと座り、ランチバッグの中から取り出されたカラフルなタッパーやステンレスボトルの水筒が並ぶのを、まじまじと。
見てるだけ。

「遠足のお弁当の定番だけどな」

フタを取ってお披露目してくれたお弁当は。
切れ目の入った赤いウインナーに、唐揚げ、断面の黄身が綺麗な満月になっているゆで卵、ピーマンの肉詰めにミニトマト。それから、おにぎりが大小合わせて4つ。おかずも彩りよく詰められていて、感心するやら申し訳ないやら。
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