恋は、秘密主義につき。
「もしそうだと答えたら・・・、征士君はどうしますか」

質問を質問で返した私は、答えを待った。
結婚に少しはそういう思いもあると隠さなかった彼の、もっと芯の部分に触れてみようと。
愁兄さまの言うとおり、自分から探して確かめる。答えはその先にあるものだから。

征士君は真剣な眼差しで私を見つめ返して、口を開いた。

「俺の気持ちはあの頃から決まってて、何ひとつ変わってないんだ。家同士の思惑が絡んでるとしたって、好きだから結婚したいって堂々と言える。それをレイちゃんに分かってもらわずに諦めるつもりなんて、ないよ」

言い切った言葉のひとつひとつに意思が通っているような。決して熱弁を奮っているのでもなく、静かな声だったのに。今までとは違う旋律で聴こえた。

不意に。胸の中で呟いたつもりが、思わず外に零れ出ていて。

「・・・・・・大人になってたんですね、征士君」

子供の頃の思い出でしかなかった彼が突然、約束の許嫁として現れたのをうまく繋ぎ合わせられずに。戸惑っていたのがようやく少しずつ、結び目が出来て一本の線になりつつあるのかも知れません。

「お姫さまを迎えに来られるぐらいには、ね」

今度は、自信あり気に口許をほころばせる隣りを見上げ。
征士君ならいいかな。・・・って。初めてそんな風に思ったのでした。



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