恋は、秘密主義につき。
2-3
まだ陽も高い時間に公園を後にして。ツツジが咲き誇る、石段の頂上の神社をお参りしたり、秘境?の滝に連れて行ってもらったり。目一杯、アウトドアを楽しんで帰路に着いた。

「こんなに歩いたのも久しぶりですー」

車の助手席に躰を沈めて嘆息。気持ちの好い疲れに、却って清々しいくらいで。

「たまには良いですね。運動不足の解消になりました」

「俺もジムには行ってるけど、やっぱり自然の中を歩くのは違うな。これからもちょくちょく誘うよ」

爽やかに言う征士君が、インストラクターに見えます。優しそうですけど、案外スパルタの。


他愛もないお喋りをしながら、高速道路に乗ったところまでは記憶にあった。
いつの間に眠ってしまったのか。目が醒めた時には一瞬、自分はどこにいるのか薄ぼんやりと。シートも倒されていたから尚更、寝心地が良かったのかも知れません。

「おはよう。よく眠れた?」

やんわりした征士君の声で、一気に覚醒。運転させっぱなしの上、その横で図々しく寝こけるなんて!
体勢を戻して、ハンドルを握っている彼に平謝りする。

「すみません、ごめんなさい。本当に失礼なことをしちゃいまして・・・」

「気にしないでいいよ、可愛い寝顔も見られたし」

それはそれで恥ずかしいですし。
困っていいのか、しょげていいのか。目を泳がせれば、悪戯っぽく笑んだ涼し気な横顔が、対向車のヘッドライトに浮かんでは陰り。

車は高速を下りて、どこかの市街地を走っているようだった。すっかり陽も落ち、眩い人口の光りがスピードに合わせてウィンドゥの外を流れていく。
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