恋は、秘密主義につき。
「レイちゃん、お腹空いてる?」

言われると、途端に空腹感を憶える不思議。カーナビの時刻表示に目を映せば19時16分。もう、そんな時間帯だ。

「そうですね。ちょっと空いてきました」

「じゃあ、うちで食べる? お弁当を気に入ってくれたら、夜もご馳走しようって思ってたんだ」

「征士君の手料理ですか?」

「ん。そう」

「えぇとそれじゃあ、お言葉に甘えて」

私の返事に、にっこりと微笑み返す征士君。

一瞬頭の隅を掠めたのは。許婚とは言え、一人暮らしの男性の部屋に上がるのは軽率かなってこと。すぐに女性を部屋に呼ぶのは100%下心だ、って。たぁ君にも口を酸っぱくして言われていましたし。

「あの、征士君」

遠慮がちに。
まさか、下心はありますか、とは面と向かって訊けない。笑顔を作ると咄嗟の思い付きを口にする。

「愁兄さまに電話していいですか?」


困った時の、兄さま頼みです。
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