恋は、秘密主義につき。
車は。私にはあまり馴染みのない街中を通り過ぎてゆく。ビルが立ち並んだ、四角い造形物の風景。
しばらくして兄さまが静かに言った。

「美玲は、鳴宮君との結婚を進めてもいいと思ってるのかな」

その言葉を自分なりに咀嚼して。いま言える答えを口にした。

「征士君とだったらいいかなって。思ったのは確かです、・・・けど」

「彼を好きになったの?」

「まだ・・・よく分かりません」

正直な本心を打ち明ける。

「たぁ君やヨウ君を好きって気持ちと変わらない感じもしますし、それに」

「・・・それに?」

「征士君への好きが本物なのか、どうしたら分かりますか?」

私は兄さまの横顔を真っ直ぐに見つめて。訊いた。

「愁兄さまを大好きな気持ちの方が大きくて、沢山あるんです」
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