そのままの君が好き〜その恋の行方〜
そして、やって来た土曜日。テレビを点けると、高校野球をやっている。


そう言えば、沖田くんと千葉にドライブに行った時も、春の選抜大会を車の中で見たな。そうか、あれからちょうど1年経ったのか・・・そんな感慨にとらわれた。


昼食を摂り、身支度を整えて家を出たのは、午後2時過ぎ。30分ほどで目的地に着いた私は、沖田くんを待つ。彼とは3時にここで待ち合わせをしてる。


待つこと約5分、改札口から出て来るとばかり思ってた彼が、正面からやって来たのには驚いた。


「あれ、待たせちゃった?ゴメン、早めに出たつもりだったんだけど。」


「ううん、そんなに待ってないから。それより、何でこっちから来たの?」


「練習出てたんだよ。桜井さんから連絡もらった時点では、当然休むつもりだったんだけど、指定場所が、まさかのここだったんで、それなら顔出せるなって思って。」


そう、ここは私達の母校、明協高校の最寄り駅。


「そうだったんだぁ。じゃ、言ってくれればよかったのに。これから学校の近くまで行くつもりだから、待ち合わせ、学校でよかったんだよ。」


申し訳なくて、そう言う私に


「いやいや。学校で待ち合わせなんて、とんでもない。この前、桜井さんが来たあと、僕が後輩達にどれだけの追及を受けたか。彼女ですか?どこで知り合ったんですか?挙げ句の果ては、どこまで進んでるの?とか言い始めて。」


そう言って苦笑いの沖田くん。


「全く今時の高校生は。」


なんて呆れ顔の彼に、私は笑いながら言う。


「ううん、違うよ。私達の頃だっておんなじだよ。だってそういうことに、一番興味のある時期じゃない。」


「そっか。」


そう言って、顔を見合わせて笑う私達。なんか雰囲気が解れてよかったな。


「じゃ、行こ。」


私達は歩き出す。そして、かれこれ10分。


「ここなんだけど。」


と立ち止まった私に


「ここかぁ。」


と声を上げる沖田くん。


「ここ、女子がよく通ってたクレープ屋だよね?」


「うん。沖田くん、知ってたんだ?」


「実は興味あったんだよ。でも一緒に行ってくれるガールフレンドなんかいないし、男同士で入る勇気もないし・・・いやぁ懐かしいなぁ、まだあったんだ。」


と思わぬ好反応の沖田くん。


「じゃ、8年ぶりのリベンジだね。さぁ、入ろう。」


「うん。」


そして、私達は扉を開いた。
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