そのままの君が好き〜その恋の行方〜
それから・・・私達の曖昧な付き合いは続いた。平均すると、仕事終わりの時間は、私の方が遅い。


仕事が終わって、携帯を確認すれば、彼からメールが入っていることが多い。今日1日の出来事を話したり、次はいつ会える?どこか行きたいとこある?なんて会話を交わす。電話で直接話すことは、あまりないかな。


会うのは2週間に1度くらいのペース。どこに行くにしても、彼は下調べをしてくれてるのか、いつも完璧と言っていいくらい、私をエスコートしてくれる。


真面目で、優しい彼の人柄がにじみ出ているようなデート。それは楽しい時間だった。


だけど・・・何かが違う。いつしか私の心に、そんな気持ちが芽生えていた。


私は正直言って、こうやってキチンと誰かとお付き合いさせてもらうのは初めてと言っていい。彼がいい加減な気持ちで、私と付き合うような人じゃないこともわかってる。


でも、これって本当に「付き合ってる」のかな?


だいたい「好きだ」という言葉も「付き合って欲しい」と言葉もないまま始まり、今だに「沖田くんー桜井さん」と呼び合っている私達。


会っている時も、ふと感じてしまう彼の戸惑いとためらい。俺が会いたいのは、一緒に居たいのはこの子じゃない、そう思っているように感じるのは、私の思い過ごしなのだろうか。


彼のデートでの完璧なエスコートも、実はかつての彼女との想い出をなぞってるだけなんじゃないか、と思えてしまう。


そんな彼の本心が見えなくて、不安で、でもそれを確かめる勇気もない私。


このままじゃいけない、でも表面的には流れる楽しい時間がやっぱり、嬉しくて、手放したくなくて。 


ひょっとしたら、一歩前に進めるんじゃないかって、密かに期待していたゴールデンウィークの連続デートもやっぱり、何も変わらなくて・・・。


いつしか、季節は鬱陶しい梅雨の時期を迎えていた。
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