Magic ring



私は選ばれし者じゃないから。




「そのですね、私……なんで此処にいるのか分からなくって……。」



どう見てもイライラしてる彼に、怯えながらもテヘペロっとウインクしてみると「チッ」と舌打ちされた。
舌打ちまでしなくても!!



バルコニーのフェンスから降りた彼は初対面とは思えない形相で私の前にズカズカと迫ってきた。



今から状況を説明すればいいことなのに、咄嗟にリングを身に付けていない右手を隠してしまった私に、彼は怪しげな顔をした。す、鋭いぜベイベー…



「手を出せ」



そういうと彼は強引に私の右手を掴んだ。
でもその目は一瞬で見開かれていた。さっきの怒っている顔とうって変わった表情だった。



「…私も何でここにいるのか分からないの。」



「……お前……、なんで…くそっ、どうなってんだよ」



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