一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
 実家の玄関を開けると、お手伝いさんの藤島さんが私を待ち構えていた。

「お帰りなさいませ! お嬢様!」
「藤島さん! ご無沙汰しています」

 家事全般を私にレクチャーしてくださったのは、藤島さん。私の第三の母のような存在だ。

「さあさあ! まずは晩御飯をお召し上がりくださいね。その後はビッグイベントが待ち構えていますよ!」

 なんだかワクワクした様子の藤島さん。ビッグイベント……嫌な予感がする。
 横に立つ父は、苦虫を潰したような顔をしているので尚更不安になった。





 夕食後、私は驚きで目を丸くした。

 これは、まさか。

「ウェディングドレスなのー♪ 作っちゃった!」

 母がるんるんしていると思ったら、まさかのウェディングドレスだった。

 首元から肘にかけてのレースがとても上品で、胸元から純白の生地が広がるAラインのそれは、とても素敵な一品。

「あっ、もちろん本物の式のときはもっと美月の意見も取り入れてオーダーメイドしましょ! でもお母さんも作りたくなっちゃってー! ほら、この間二人のラブラブなハグをみたらピピーンときたのよー!」

「……素敵……」

「まぁ、美月ったら。可愛い顔してる! 晴正さんも呼ぼうかと思ったんだけど、急かすようで悪いかなーと思って。でもどうしても美月に着て欲しくて」

「お母さん、ありがとう。今、着てみてもいいですか?」

「うん! 着てちょうだい!」
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