一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
「……高峰さん? おーい! 大丈夫?」
「あ! す、すみません……」

 マイナス方向へ思考が飛んでしまっていた……。もう何から何まで申し訳なく思えてくる。

「疲れたよね? 食欲湧かないかな……出前じゃ食べたいものなかった? 何か食べれそうなもの買ってこようか?」

 先生の優しさが胸に染み渡る。私が専属パラリーガルだから、こんなによくしてくれるのだろうか。

 対して私は先生に頼るばかりで、母に言われるまま転がり込んでしまって……。なんだかひどく惨めな気持ちになって、俯くしか出来ない。

「……高峰さんはさ、どうしてお見合いは嫌だったの?」
「え……」

 突然先生が話題を変えたので、驚いて顔をあげた。

「好きな人がいるのに、俺と住むのが辛い……?」

 私が俯く原因を先生なりに探っているようだ。でも思ってもないことだったので、慌てて訂正する。

「ち、違います! そうではなくて、急にこんなことになってしまって、申し訳なくて。先生にお付き合いされている方がいらっしゃるなら、どうお詫びしたら良いか……」

「彼女はいないよ」

「想いを寄せる方は? その方に誤解されたりしませんか? 私、こんなことになるなんて思ってもみなくて……本当に申し訳ありません!」

「ちょちょちょ! 早く頭あげて!」
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