一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
その後の展開は早かった。
奈良崎と愛海さんの結婚祝賀会の連絡に合わせて、美月と俺の婚約を発表。所長直々に、二組を盛大に祝ってやろうと、事務所内メールで一斉送信したのだ。しかも、「俺と麗華ちゃんみたいなラブラブ夫婦を目指してね☆」というアホみたいなコメント付きで。
美月の不倫は誤解だと愛海さんからも広めてもらい、殆どのパラリーガル達は態度を改めた。
そして意外にも、嫌がらせの主犯格から、早々に謝罪を受けた。
伊東多香代さん、四十六歳。パラリーガル達をまとめる立場にある彼女は、以前から所長に好意を抱いていた。だが、所長と奥様が大変仲睦まじい様子なので諦めていた。
そこへ美月との不倫の噂が聞こえてきた。若い女なら不倫も出来たのかと失意の日々だったが、まだ妬んではいなかった。
しかし、美月が弁護士と付き合い始めたと聞き、二股疑惑も飛び交う中、嫉妬と怒りが止まらなくなってしまったそうだ。
他のパラリーガル達は彼女に言われ、仕方なく言うことを聞いていたらしい。
所長から、雰囲気良く働いて貰いたいと直に懇願され、改めることにしたそうだ。結局全部所長のせいのような……。
「本当に申し訳ありませんでした……」
「美月は僕の婚約者です。今後、また同じようなことになれば、法的措置も取ります」
「承知しました」
伊東さんと秘密裏に念書を交わす。伊東さんは勤続年数も長く、他のパラリーガルは逆らえなかっただけだったようで、美月からも愛海さんからも、問題なく業務をこなせていると報告は受けている。だが、念のため忠告をしておいた。
もう二度と、こんなことにならないよう、俺の手で、美月を守りたい。