一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約

☆怖かったです

 花火大会当日、外は青空が眩しいほどの快晴。私は久々に実家に帰宅していた。

 母の洋服ブランド『ルゥナー』の新作を試着する為に、呼び出されたのだ。

 モデル以外の人も綺麗に見える服かどうか確かめたいのだそう。私はモデル体型とは程遠いので、寸胴な方々も安心ですよ!

 かれこれ三時間、着せ替え人形をしている。

 これで何着目だろう。もはや新作ではないものまで持ち出している。
『ルゥナー』は、可愛い女の子をテーマにしたブランド。ちょっとアラサーにはキツくなってきましたよ?

 この服は柔らかいシフォン生地で、薄いグリーンのワンピース。ブラウスのような襟がとても可愛い。

「やーん! 美月ってば、可愛いー! 人妻でもかーわーいーいー!」
「姉ちゃんも人妻かー」

 実は私、年の離れた弟がいる。
 彼は成沢守(なるさわまもる)くん、十七歳。イマドキのイケてる高校生だ。

「まっ、まだ結婚してないしっ! 守くんが人妻って言うと、なんか破廉恥!」
「破廉恥って古くねー? 姉ちゃんそれでよく結婚してもらえるなぁ」

 守くんは成績優秀、眉目秀麗の御曹司。年齢よりも落ち着いて、年上に見られることも多い。
 高校では生徒会長をしていて、モテモテで人気者なのだそうだ。我が弟ながら完璧すぎますよ、守くん……。
 お姉ちゃんは居心地悪いです。

「うるさいですよ! ……あっ、お母さん、私そろそろ……」
「あらもう時間? えー! ざんねーん」

 時刻は夕方十七時。
 これから晴正さんと二人で外食をする約束だ。

 晴正さんは奈良崎先生のご自宅へお邪魔していて、待ち合わせして外食。その後は、家で花火鑑賞をする予定なのだ。
 約束を覚えてくれていたことが嬉しい。今晩のことを楽しみに思いながら、今朝の約束した時のことを思い返した。
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