一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約

* * *


「じゃあ、行ってくるね」

 晴正さんは、愛海さん御用達のケーキ屋さんでお土産を買うので、私より早めに出かけることになった。本日も玄関にてお見送りだ。

「はい! 楽しんできてくださいね! 愛海さんにもよろしくお伝えください」
「美月も実家でゆっくり休んでな」
「あー……今回は新作の試着ですから、脱いだり着たりで忙しいです」
「脱いだり着たり!?」
「沢山のフリフリ服を着せられて、写真をいっぱい撮られるんです。すごく恥ずかしいんですけど、母が嬉しそうなので……」

 晴正さんは少し考えて、「その写真を入手したい……!」と凄く真面目なお顔で呟いた。アパレル系のクライアントは現在無い気がするが……、何かお仕事に役立つのかしら?

「母に頼んでみましょうか?」
「是非!」
「ふふっ。でも恥ずかしいです。モデルさんの写真ならブランドのサイトに……」
「美月の写真がいいの。美月のじゃなきゃダメ」

 ぐんと顔を近づけてそう言われ、つい動揺して、私は「……はい」と頷いてしまった。
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