legal office(法律事務所)に恋の罠
「ということですので、夢谷さん、行きましょう。時間もないので打ち合わせをしながら食事をしませんか?当ホテルの自慢のフレンチをご馳走しますよ」

近づいてきた奏が、慣れた手付きで和奏の背中を押す。

「食事代は自腹で結構です。それと、近すぎる男女の距離は要らぬ誤解を生みますし、場合によってはセクハラと見なされます。ご注意を。ここはアメリカではありません」

奏から拳一つ分程の距離を取り直した和奏は、書類の入ったビジネスバッグと莉音から貰った鉢植えとマカロンの入った紙袋を抱えてドアを開けた。

「どうしました?行きましょう」

奏を振り返った和奏は、その後、何の未練もなくスタスタとエレベーターに向かう。

その無敵のアイアンフェイスに苦笑する奏は、同じようにビジネスバッグを抱えて執務室に鍵を掛けた。


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