legal office(法律事務所)に恋の罠
「将生さんの件が片付いて本当に安心しました!」

山崎法律事務所が食事兼クライアントとの面談に利用することの多いこの和食料亭は、山崎庄太郎の妻が経営するお店だ。

メインの料亭とは別に、離れの個室を有し、クライアントの秘密保持に配慮している。

「莉音、飲み過ぎだぞ」

「大丈夫、私もう、21歳の大人だよ」

「その大人がこんなトラブルに巻き込まれたんだろ」

「そうだった・・・」

テーブルに突っ伏した莉音は、来店はじめからハイペースでお酒を飲み、もう潰れる寸前だ。

「らいじょうぶ、にいさんのまえれしか、こんなには、のまないから」

正直、まだ奏からの相談事は全く聞けていない。

食事が運ばれてくるとすぐに、お酒に酔ってしまった莉音の独壇場が始まったからだ。

将生との出会いから、恐怖のストーキングと脅し。

奏は時折、宥めてはいたが、和奏と湊介はクライアントの心理を配慮して黙って聞き役に徹していたのだ。

食事が始まって一時間、テーブルにうつ伏せになった莉音は次第に大人しくなり、ついには寝息を立て始めてしまった。

「奏さんと夢谷弁護士は、まだ話が終わっていないでしょう?僕が責任もって莉音さんをご自宅に送り届けますよ」

「いや、話は今日でなくても・・・。奏さんも莉音さんがご心配でしょう?」

莉音を心配した和奏が、奏に声をかける。

「いや、こいつは酔うとこんな感じなんです。湊介さんなら安心だし、お願いしてもよろしいのですか?」

苦笑しながら、隣で眠る莉音の頭をクシャクシャとなでる。

「お任せ下さい」

湊介は、締めのデザートを待たずに、莉音を抱き起こして部屋を出ていってしまった。


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