legal office(法律事務所)に恋の罠
その日は、次第に酔いが覚めていき本来のアイアンフェイスを取り戻しつつあった和奏を、奏はマンションまで送り届けた。

和奏はなんとかいつもの理性を保つことができたとホッとしていたが、男性にスマホの連絡先と自宅までの道のりを知られてしまったという失態を犯している。

普段なら送られることすらないが、仮にそういうことがあったとしても、数百メートル先のコンビニで降ろしてもらっていたであろう。

タクシーに乗った時点で住所を告げてしまっていたので後の祭りであったのだが・・・。

「それでは、私はここで。おやすみなさい」

「おやすみなさい。・・・和奏さん、月曜日からお待ちしております」

すかさず右手で握手を交わした奏に、眉を上げて抵抗を示すも全く彼は気にする様子もなく微笑んでいる。

和奏もこの二日間でずいぶん奏の押しの強さに慣れてしまったようだ。

その後、呆気なくタクシーに乗って去っていった奏に拍子抜けしたが、強引に迫られずにホッとしている和奏がいた。

玄関を開け部屋に入った和奏は、心地よい疲れと酔い任させてスーツのまま眠ってしまっていた。

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