legal office(法律事務所)に恋の罠
「知り合い、ですか?」

二人と同じように、笑顔で手を振っていた和奏に奏が尋ねた。

「ええ、大学の頃の知人です。6年...位ですかね、会っていなかったから、どうしているか気がかりだったんですけど、幸せそうで安心しました」

一瞬悲しげな表情が見えたが、すぐに微笑みに変わり、独り言のように呟いた。

「ここの顧問弁護士になったお陰で、彼に再会できたんだもの。今度こそ前に進めるはず・・・」

勢いよく顔を上げた和奏は、何かを振り切ったように歩き出す。

「桜坂CEO、ご案内ありがとうございました。部屋に戻り、書類作成に入りたいと思います」

と、その時、何もない段差に爪づいた和奏を奏の腕が支えた。

「おっと、酔ってもいないのに爪づくなんて、和奏さん、さては動揺していますね?」

おどけていった奏の言葉に

「そうかもしれませんね」

と、奏の腕の中で、彼を見上げて極上の笑顔を返す和奏。

それは今まで見た中でも一番美しかった・・・。

奏は完全に、

・・・・・和奏に陥落した。
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