legal office(法律事務所)に恋の罠
「それで、吉村さんのご相談とは?」

「もう、和奏ちゃんはせっかちね。とりあえず、貴方達が何か頼んでからにするわ。さあ、飲み物を注文して」

「ウーロン茶を」

「何言ってるの。私の奢りなのに、ウーロン茶なんて飲ませられないわ。ここはダイニングバーよ。お酒は強いくせに何言ってんの」

「へえ、良いことを聞きました。和奏さんはお酒が強いんですね」

「そうよ。しかも素直になるおまけつき」

奏の質問に、吉村がおどけて答える。

「ちょっと素面では伝えたくない内容だから、和奏ちゃんには少しリラックスして聞いて欲しいの。仕事ではなく、プライベートなことだから」

吉村のお願いにただならぬ雰囲気を感じて、和奏は溜め息をついた後、軽く頷いた。

「わかりました。もう、奏さんにはお酒を飲んだ姿は見られていますのでどうでもいいです。モヒートを」

和奏の注文を聞いて、吉村が奏に顔を向ける

「彼氏さんは?」

「ブラッディメアリーを」

「まあ、情熱的なのね」

「はい、彼女には伝わっていませんが」

了解、

と言って吉村はカウンターへと消えていった。

ブラッディメアリーのカクテル言葉は

"私の心は燃えている、絶対に勝つ"

カクテルに言葉があることを知らない和奏が、いつも飲んでいるモヒートのカクテル言葉。

それは、

"私の渇きを癒して"

だった。

「喜んで」

微笑んで手を差し出した奏につられるように、首を傾げた和奏も思わず握手を返してしまっていた。


< 47 / 107 >

この作品をシェア

pagetop