legal office(法律事務所)に恋の罠
「昨日ね、宇津井が来たの」

「宇津井、ですか?」

げんなりする和奏と同じように、一日に何度も耳にしてしまったいけすかない男の名前に奏も顔をしかめた。

「あら、そのお顔、桜坂さんでしたっけ。貴方も宇津井を知っているのね」

「ええ、わが社の美人弁護士を侮辱した男です。忘れるはずがない」

奏の不敵な笑みに、吉村も微笑みで返す。

「あら、宇津井も怖いもの知らずなのね。こんなに喧嘩が強そうなイケメンに自ら勝負を挑むなんて」

「違うの。吉村さん。宇津井は、私を馬鹿にしたかっただけなのよ」

どう見ても、あんな二流の男より、和奏の方が勝っている。

なのに、こんなに和奏を萎縮させるようなことをあの男はしたのだろうか?

奏は口を挟みたい欲求をグッと押さえ込み、吉村の言葉を待った。

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