legal office(法律事務所)に恋の罠
「小池くんは私の初彼で・・・、趣味も合ったし、勉強することに理解もあったから長く付き合えたんです」

和奏はぼんやりとテーブルに飾られたピンクのチューリップを眺めながら言った。

「このピンクのチューリップ、たぶん、小池君からです」

クスッと笑った和奏の肩を、奏がそっと抱き寄せて頭をコツンとぶつけた。

「花言葉を、知ってますか?物知りで勉強熱心な奏さん」

からかうように見上げてきた和奏に

「"愛の芽生え、誠実な愛"ですか・・・?気障ですね」

と、早々に降参して、スマホで検索した奏が、そう口にして不服そうに言った。

「奏さんが言うんですか?」

アハハ、と笑う和奏は年相応な20代の女性だ。

「彼が最後に私にくれた花は、黄色いチューリップでした・・・。"望みのない愛"そして"名声"」

ピンクのチューリップの花びらをそっと撫でる和奏の顔は泣いているようにも見えたが、涙は流していなかった。

小池が今回、和奏に送ったチューリップが意味するものは、奏自身に違いなかった。

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