legal office(法律事務所)に恋の罠
「和奏、お疲れ様」

和奏が事務所の自デスクのワーキングチェアに腰かけると、叔父である山崎庄太郎がコーヒーを差し出してくれた。

「山崎先生、ありがとうございます」

「和奏、今は時間外だ。敬語は必要ない」

庄太郎は優しい笑顔を和奏に向けた。

「今回のクライエントは、兄が代理人だろ?男と長時間接して大丈夫なのか?しかも天下の桜坂CEO、イケメンだし気になるところではあるが・・・」

「大丈夫よ。8歳も年の離れた妹を溺愛してるようだし、女性をバカにしている様子もなかった。有名ホテルのCEOだけあって立場をわきまえてる」

女性専任弁護士になるくらい和奏は男性が嫌い

・・・という設定にしている。

それを理解した上でこの法律事務所に採用してくれたのが、叔父で弁護士社長の庄太郎だった。

和奏は小学3年生の時から大学を卒業するまで、庄太郎の家に居候させてもらっていた。

庄太郎とその妻の佳菜子が育ての親と言っても過言ではない。

弁護士になろうと思ったのは中学2年生の職場体験で弁護士事務所を見学した時。

クライエントの悩みに親身になって相談にのる叔父の姿に感動を覚えた。

そして世の中には、和奏が想像を絶するほどに悩み、苦しんでいる女性がいることを知った。

それからの和奏は、有名進学高校に進むと昼夜問わず勉学に勤しんだ。

成績は常にトップクラス。

庄太郎の弁護士事務所に入り浸り、弁護士秘書のような書類作成も手伝った。

大学は学費もかからず、叔父の家から通えるT大学に進学。

特待生として奨学金をもらった。

弁護士事務所での経験も効を奏し、大学3年の時には司法試験予備試験に合格した。

翌年に司法試験に合格。

大学卒業後に1年間の司法修習を終え、23歳で弁護士になった。
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