海賊船 ~天下は誰の手に~
「………これで終わりだ。謙信。」

いつか終わりは訪れる。俺の刀の切っ先が謙信の喉元を捉えた。お互いもう傷だらけだ。腕や体の至る所から血がでている。

「ふふ。数十年合わぬ間に腕を上げましたね、信玄。」

「そうだろう。毎日幸村……部下と打ち込みしているからな。」

「………あなたにも心を委ねられる人がいるのですね…。少し安心しました。あなたは一人で抱え込むことが多い人でしたからね。」

「はっはっはっ。そうだったか?」

「ええ。それに半兵衛の時も一人で抱えこんで城を出ていったではありませんか」

「あれは………俺の責任だからな。」

二人の間に僅かな沈黙が流れる。…………もう終わりにしよう。

「さぁ、言い残すことはないか。謙信。」

「そうですね、じゃあ私から一言。」

そして謙信は強い瞳を俺に向けて、こう言った。

「生きなさい。」

………それが敵に言う言葉かよ……。わかったよ。お前の言う通り。俺は生きる。半兵衛の分まで。そして、お前の分まで。

「ありがとう。謙信。……………じゃあな。」

そして俺は謙信の喉に切っ先を向け、振りかぶり、振り下ろす。

謙信は穏やかな顔をしていたように感じた。
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