花のOLは寿退社が希望です~フレグランスは恋の媚薬

その2、二階堂清隆

二階堂清隆はこの色っぽい婚約者を見る。

取り分け胸が大きいとか、肉感的な体をしているというわけではない。
短いスカートで脚を晒しているというわけではない。

だが、彼女が町を歩くと、ふっと振り返らずにはいられない雰囲気を持っている。
退職前の有給消化に入ってから、会社から何かしら毎日、携帯電話に電話が入る。

後輩のさやかから恥も外聞もないヘルプの電話もあるが、一番気に入らないのは彼女のボスからの電話である。

ピロロロ。

神野紗良の携帯がなる。
「あ、高崎部長だ」

今日は紗良の一人暮らしの家にご招待である。二階堂は綺麗に整えられたリビングに寛いでいた。
紗良は、夕食を作っていた手を休めて、携帯を受ける。

「はい、はい、、、。いえ、決心は変わりません。、、、は?フランス支店に転勤?!」

一瞬紗良の顔が輝き、二階堂清隆の顔を見た。清隆は冷静に首を横に振る。

それを見て冷静になる。
「、、、せっかくいいお話ですが、退職の意思は変わりませんので、毎日お電話ありがとうございます」
電話を置くのを待ちきれず、清隆は言った。

「毎日毎日、あの部長電話をかけてくるな。紗良を引きとどめようと必死だ。
あの男、パーティーにも一緒にいたな?」

「そうよ?高崎部長のところで仕事ができたのはしあわせだったよね。
彼は女性を見下したりしないし、、、」
それを聴いて、清隆は堪らなくなる。
机に携帯を置いた紗良の手を掴む。

「あなたの口から他の男の話がでるのが気に入らない」
紗良はびっくりして眉をあげる。
「高崎部長はわたしの上司よ?」
と言う唇を清隆は塞ぐ。

そのまま、服の下に手を滑り込ませ、背なかの感触を味わう。
滑らかな肌。ふわっと紗良のえもいえぬ甘い体臭を吸い込んだ。

「ご飯は、、」
「先にあなたを食べたい」
紗良はベッドに押し倒された。

「まさか、あなたがこんなに独占欲が強いって思わなかったわ!」
紗良は言う。

「それは、あなたが自分の魅力に無頓着だからだ。気を付けよ。男は隙あらばあなたの唇を奪おうとするぞ?」
きつく返す。

そもそも、はじめての出会の時も二階堂清隆は振られて落ちこんで自暴自棄になっていた紗良をホテルの部屋に引き込んだのだ。
そうしなければ、この甘い匂いをさせる女が他の肉食獣たちに食われそうだったからだ。
強く意識されないまでも本能に訴えかける彼女の匂いは、男を惹き付ける。
その匂いは、欲情すると更に高まる。


そういう、清隆自身も、その敏感な鼻を持つがために、その甘い誘惑にあがらうのには、意志の力がいる。
普通の嗅覚の男ならば、なぜか自分ではわからないまでも、紗良のことが気になってしまうだろう。
神野紗良は希なるものなのだ。

「そんなはずないでしょう!仕事は仕事よ?」
「俺と知り合ったのも仕事だったが」
そういうと紗良は真っ赤になる。

「清隆さんは別!プロジェクトが終わるまで、仕事の関係者としての一線は死守したんだから!」
「死守?俺と何かを期待していたのか?」
意地悪に聞く。
「期待も何も、あなたとあったらいつもこんな風になるんだから」

紗良は清隆の手を下に導く。
既に受け入れる準備ができている。
甘い香りにくらくらしそうだった。

「あなた以外にこんな風になったことはないわ!」
「あの、CMディレクターにもか?」
「CM、、?山崎さんのこと?」

紗良はぷはっと笑える。
こんなに嫉妬深い男は知らない。
山崎ディレクターとは清隆が日本に帰国の際に、一度撮影シーンに立ち会っただけだったはずだ。

清隆は突きいれ、それ以上紗良に笑わせないのだった。

自分の婚約者殿は自分の魅力を知らない。
なら、このまま気がつかないままでいてもらおう。
それとも、男を惹き付ける匂いを打ち消す香りの配合を、フランスに行く前に考えようか。

そう思う二階堂清隆だった。



その2、完
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