月夜の砂漠に一つ星煌めく
「しきたり?」

そんなしきたりなんか、聞いた事がない。

「ただ……ジャラール王子とネシャート王女は、とりわけ中のおよろしいものですから……王様とお妃様が、もう少しだけ、引き離すのは先延ばしにしようと、仰せられて。」

女中の話を聞くと、ネシャートと一緒にいる事は、もう叶わないらしい。

「……もう少しだけ、と言うのは、無理なのか。」

「ネシャート王女はもう既に、7歳でございます。ジャラール王子も、もうお付きになる侍従を、お選びにならなければ、なりません。」

少しだけ、分別のある年に成長すると言うのは、子供だった、楽しい時間との別れも、同時に意味していた。

「分かった。」

「ご理解頂き、恐れ入ります。」


俺はその後、しばらく座ったまま、ネシャートと過ごした子供時代を、思い出していた。

車輪を押して走る俺を、よく後ろから付いて来ていたっけ。

ああ、そうだ。

水遊びの途中で、二人で転んで、母上に怒られたものだ。
< 11 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop