月夜の砂漠に一つ星煌めく
「ジャラール王子。あなたがどこにいても、変わらず愛しています……」

ネシャートの頬に、一滴の涙が流れた。

「俺も……」

“俺も愛している“と言いかけて、そこで立ち止まってしまった。


言ってどうするんだ。

それはただ、ネシャートを縛り付けるだけ。

きっと、ネシャートの幸せの、妨げになる。


「ジャラール王子?」

「ああ、ありがとう。その気持ちだけで、天にも登れそうになる。」

「まあ……」

涙を溢しながら笑ったネシャートに、涙を押し殺しながら、そっと微笑んだ。

そして、ゆっくりとネシャートから、離れて行く。


その時ふと、小さな頃のネシャートが、脳裏に浮かんだ。

『おにい!』

『ネシャ?』

何も考えずに、そうお互いを呼び合った時が、懐かしい。

もし、一つだけ願いが叶うのだったら、迷わずにあの頃を言うだろう。


その時、階段の下で、小さくネシャートの呟く声が聞こえた。
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