月夜の砂漠に一つ星煌めく
「さあ、ジャラール様も。」

俺はその時、少しだけムッとした。

今まで、王子を付けずに名前を呼ばれた事等、ただ1度もなかったからだ。

「ハーキム。」

「はい。」

「私の事は、王子と呼べ。」

「それは、できませぬな。」

「なに?」

俺が指示して。断られる事も、生まれて初めてだった。

「私は、あなたの侍従。侍従は、使用人の中でも、一番側にお仕えする身。言わば一心同体なのです。そんな私が、あなたを王子と呼ぶ等、甚だ可笑しい。」

「はあ?」

あまりの言葉に、口をポカーンと開けたまま、ハーキムを見ていた。

「それでは、ジャラール様。駱駝をこの木に、繋げて下さい。」

「私が?直接?自分の手で?」

「他に、誰がいるのですか?」

おまえがいるだろうと、言いかけて。

それは止めた。

なんだか、面倒な事になりそうだから。


俺は駱駝の手綱を引き、大木にそれを回した。
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