月夜の砂漠に一つ星煌めく
「国王。」

「考えは、決まったか?」

一度息を飲んでから、はっきりと答えた。


「私は、どの国へも行きません。ネシャート王女の、一番の側近として、死ぬまでこの国に、尽くすつもりです。」

辺りは、シーンと静まりかえった。

「ジャラール……王子?」

呆然と立ち尽くしたネシャートが、小さく俺の名を呼んだ。


ああ、誰よりも美しいネシャート。

他にどんな女性が現れたとしても、一生その輝きは失わない、唯一愛しい人。

いつか王位を継ぎ、相応しい結婚相手を、その隣に迎える事になったとしても、この気持ちは、死ぬまで変わらない。

俺がどこへ行っても、幸せを祈る気持ちは、変わらないと言ってくれた君へ。

たった一つ、できる事があるとすれば、結ばれる事がないとしても、ずっと君の側にいて、君の力になる事なんだ。


そして俺は立ち上がると、ネシャートの前に、膝待ついた。
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