月夜の砂漠に一つ星煌めく
その後立ち上がり、ハーキムの元へ歩き始めた。

たった2、3メートル。

それだけの距離が、とてつもなく遠くに感じた。


王達の冷たい視線。

民達の無言の驚き。

姫君達の憎しみの歯軋り。

そして……


「ジャラール……」

立っていられず座り込んで、静かに泣いている、ネシャートの悲しみ。


それを一気に背負いこんで、一歩一歩が重く感じていたからだ。


俺がいた場所に戻ると、ハーキムは俯いていた。

彼に背中を向け、前と同じように、国王に向かって膝を着いた。

「すまぬ、ハーキム。」

「なぜ、謝るのですか?」

「おまえの期待を、裏切った。」

「何を仰います。ジャラール様は、私の期待を裏切ってはおりません。」

不思議に思いながら、少しだけハーキムの方を、振り向いた。

「私がジャラール様に期待する事は、あなたらしく生きる事です。この国に尽くすと決めたあなたを、私は誇りに思います。」
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