月夜の砂漠に一つ星煌めく
そして一瞬、離れたと思うと、今度は俺の上半身に、飛び掛かってきた。

殺される!

そう思った時だ。

「ギャッ!」

野犬の断末魔が、側で聞こえた。

俺の足元に、野犬の血が流れ出す。


「大丈夫ですか?ジャラール様。」

「……ハーキム。」

一匹の無惨な姿を見た後、夜明けも相まってか、残りの野犬は、唸りをあげながら逃げて行く。

その様子を見送った後、ハーキムは俺の腕を掴み、起こしてくれた。


「刀を手から離すとは、何事ですか。」

「……すまん。」

「敵に背中を向けて逃げるとは?野犬に離せと仰っても、無駄な事は分からなかったのですか?」

「……すまん。」

「何よりも、火を絶やすとは、基本中の基本が、なっておりません。」

「……すまない。ハーキム。」

終始、謝ってばかりの俺だったが、ハーキムがいなければ、血が溢れ出していたのは、あの野犬ではなく、俺の方だった。
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