月夜の砂漠に一つ星煌めく
「ジャラール様、ネシャート様が、こちらにいらっしゃいます。」

「ああ……」

ハーキムに言われなくても、分かっているのに。

「いつものように、手をお振り下さい。」

「えっ?」

「いいですから、早く。」


何だ、偉そうに。

と思ったが、ハーキムの言う通り、ネシャートに手を振った。

すると、ネシャートは安心したのか、手を振り返すと、花畑に戻って行った。


「ジャラール様。何事があっても、何事もなかったかのように、お振る舞い下さい。」

息が詰まる。

「それが、王子としての心構えです。」

返事もしたくない。

俺はこれから、ハーキムにどれだけ、口煩く叱られるのかと、ウンザリした。

「ジャラール様。ご理解頂けましたら、お返事を。」

「……分かった。」

「では、参りましょう。」

ハーキムが、私の先を行く。

その駱駝に乗っている姿が、颯爽としていて、どちらが王子なのか、分からない程だった。
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