月夜の砂漠に一つ星煌めく
その時だ。

「ねえねえ、次の王位継承は、ネシャート王女だって、本当の事なの?」

「そういう専らの噂よ。」

「どうしてなのかしらねぇ。ジャラール王子様という兄上がおいでだし、王女なのにね。」

我々がここにいる事に、気づいていない女中達が、根も葉もない噂話をしていた。

「お気になさいますな。」

ネシャートは、いつも俺を励ましてくれていた。

「気にしてはおらぬ。」


何かあっても、何事もなかったように、お振る舞い下さい。

ハーキムの教えが、いつしか悲しい程に、身に付いてしまっていた。

「私の前で、嘘はお止め下さい。」

そんな俺の気持ちを、ネシャートは分かっていた。

「お兄様が、いつも強気に振る舞うのは、王子としてのお立場があっての事でしょう?私の前では、そんな事お忘れになって下さい。」

ネシャートは、私の腕に寄りかかった。

「私はたった一人の、血を分けた兄妹ではありませんか。」
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