月夜の砂漠に一つ星煌めく
俺は何も言わずに、ネシャートの肩に、腕を回した。

言葉は無くても、彼女と繋がっている気がしたんだ。


「ジャラール様!」

突然、ハーキムの呼ぶ声がして、ネシャートは離れてしまった。

「今、行く!」

返事をして、立ち上がった。

するとネシャートは、俺の腕を掴み、こう言ったんだ。

「お兄様。もっと、お兄様にお会いしたいです。」

悲しそうな顔をする、ネシャートの頭を優しく撫でた。

「大丈夫。いつでも会える。」


それは9歳の時、二人が大人の手によって、引き離された際と、同じ言葉。

あれから、俺の気持ちは、何一つ変わっていない。

「はい。」

ネシャートも、そうだったんだ。


ハーキムが、俺を探していた理由は、父上が俺を呼んでいたからだった。

一体何事かと思いながら、俺は父上の前に、姿を現した。


「父上、参りました。」

「ああ、ジャラール。勉強は、進んでいるか?」

「はい。順調でございます。」
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