月夜の砂漠に一つ星煌めく
確かにそんなに痛くはないけれど、血が滲んでいると言うのに。

「いいんだ、ハーキム。脇に控えていろ。」

「ジャラール様……」

俺が剣を構えると、ハーキムは、ようやく脇に逸れた。


「行きます!」

「オウ!」

そしてまた、剣が重なり合う度、キィーンと言う音が響く。

先生の剣は、一回一回が重くて、踏み込まれる度に、俺は後ろへ下がった。

「そんな戦い方で、敵に勝てるとお思いですか!」

「くっ……」

「それで一国の王子ですか!!」

先生に剣を振りきられ、俺は後ろへ飛ばされてしまった。


「ジャラール様!前!」

ハーキムの声で、顔を上げると、先生が俺の目の前で、剣を振り上げていた。

「うわっ!」

突然の事で、両手で顔を押さえた。

すると先生の剣は、俺との僅かな距離のところで、ピタッと止まった。

「情けない。これが、この国の王子か。」

そう言って先生は、行ってしまった。
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