【完】さつきあめ〜2nd〜
でも、こんなに幸せな夜はどこを探しても、なかった。
まどろみの中、朝日の腕の中でゆっくりと目を閉じる。

恋を知らなかった頃、さーちゃんの話をよく聞いていた。あの頃はこんな自分が誰かを好きになるなんて考えもしなかったし、どこか不自由な人間だった。
でも恋をしているさーちゃんはいつも幸せそうに微笑んでいた。姉のように、孤独だった小さなわたしを救ってくれたさーちゃん。雨の日に傘をさしてくれた。
わたしにとって初めて信頼を寄せる人間だった。
でも、さーちゃんの為に入ったこの世界でたくさんの出会いがあって、さーちゃんのように信頼の置ける人を何人も見つけた。
わたしの世界で、全部始まりはさーちゃんから。
始まりは、全部あの雨の夜からだった。

朝日が光に出会って、ひかりを見たように
わたしもさーちゃんに出会って、ひかりを見たんだ。
あの雨の中に見せた微笑みに、わたしは救われた。

さーちゃんがもしも生きていたのなら、わたしが朝日を好きになった事を許してくれるだろうか。いや、さーちゃんがいたのなら、さーちゃんの隣で笑う朝日をきっと許してあげることが出来た。
そして、さーちゃんがいなかったのならわたしは朝日に出会えてはいなかっただろう。
…さーちゃんが生きていたのなら、わたしは七色グループには入らなかった。
少しの違いで変わっていた運命。出会わなければ出会わない幸せもあったかもしれない。
けれどわたしたちは出会ってしまった。

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