【完】さつきあめ〜2nd〜

朝日の掴まれた拳が振り上げられる。
その瞬間、わたしは光を庇うように2人の間に入った。
向けられた拳が、自分の顔のすれすれに入って、力が抜けていった。

衝撃はあったけれど、痛みはなかった。けれどその場にわたしは転がるように落ちた。

「夕陽!!」

先に手を差し伸べたのは光。
細くなってしまった体。でもわたしを抱きすくめるには十分大きな体。
懐かしい熱い体温と、海の香り。
どうしてわたしはこの人に抱きすくめられて、泣いているのだろう。自分の感情がコントロール出来ない。

けれどその瞬間ハッとしてしまった。
光の腕の中から見えた朝日の表情。

捨てられた小さな男の子みたいな顔をした朝日が、泣きそうになってるように見えて。

「あんたが俺を気に入らねぇって事は前々から分かってる!
けどさ!俺あんただから、あんたが人を本当は大切に出来る人間だって分かってるから2人の事を認めようとも思ったさ!
けどこのざまは一体何なんだよ!」

今度は光の拳が朝日へ飛んでいこうとした。
そこで悲鳴のような美月の声が響いた。

「やめてーーー!!!!」

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