【完】さつきあめ〜2nd〜
「ゆりさん!!」

「ゆりさん!お知り合いですか?!
いやーオーナーに会いたいって言われるから…」

「ええ。そうね。知り合いね。有明さん事務所でミーティング中でしょ?
連絡してあげてよ。それとVIPルームでこの子と話があるから」

「けど………」

「あら、有明さんに双葉のさくらが来てるって言えばすっ飛んでくると思うけど?」

「双葉のさくらさん?!…あ、どこかで見た事あるなと思ってたら…」

「そ、話は早いわね。連絡頼んだわよ
あたしたちVIPルームにいるからね」

「はい!!分かりました!!」

その黒服は勢い良く返事をして、わたしはゆりに手招きされてVIPルームに通された。まさかゆりと、EDENでこんな風に話す日が来るなんて。
言いたい事は沢山ありすぎて、けれど何から話せばいいか分からなかった。
EDENのVIPルームは、七色グループ顔負けなくらい豪華で、けれどモノクロでパッと見の華やかさというよりかは見えない所にお金をかけているところが光らしいお店造りだなと思った。
朝日は光よりずっと目で見える華やかさを好む人だったから。

「どうぞ」

ゆりはテーブルに置かれているグラスに氷を落として、そこにお茶を注ぐ。そしてそれをこちらへ差し出した。
そして自分は煙草に火をつけた。
ひとつひとつの身のこなしが優雅で、絵になるような人で、煙草を持つ指の先まで手入れの怠っているところなんて何ひとつ見つけられない様な人。
どこにいても、オーラのあるような人だとは思っていた。けれどお店の中にいるとより一層存在感のある人。ゆりにかかれば、華やかな店内さえも引き立て役になってしまうのだ。
勝てるところなんてひとつも見つけられない圧倒的な存在。

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